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事業戦略につながる競合分析のやり方|便利なフレームワークも紹介

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競合分析は、事業戦略を策定する上で欠かせないプロセスです。

自社のライバルとなる競合企業の動向を把握し、マーケティング戦略や製品開発に活かすことで、競争優位性を確立できます。

本記事では今回は100名以上のスタートアップ立ち上げ支援を行ってきたスタートアップスタジオ「norosi(ノロシ)」の知見をもとに、競合分析の基本的なやり方から、効果的に分析を行うためのフレームワークを解説します。

自社の強みを最大限に活かすための競合分析の手法を身につけ、事業成長を加速させましょう。

起業やスタートアップビジネスに関心がある方はnorosiへ

競合分析とは


競合分析は、自社のライバルとなる競合企業について調査・分析することを指します。具体的には、競合企業の製品やサービス、マーケティング戦略、顧客層、価格設定、販売チャネルなど、さまざまな側面を詳細に調査します。

競合分析は、新規事業立ち上げや、既存事業で新たな打ち手を考える際に非常に有効です。

競合他社の分析を通じて、市場全体の力関係や自社の特性、市場における立ち位置を客観的に知ることができます。分析結果を戦略策定に活かすことで、自社の強みを最大限に活かし、競争優位性を獲得することも可能になります。

また、競合分析は一度行えばそれで終わりというものではありません。市場や顧客の状況は常に変化しているため、継続的なモニタリングが必要です。

そのため1年に一度は競合分析を行い、新たな競合やビジネスのトレンドを把握するのが理想的です。

競合のない製品・サービスはない

現在のビジネス環境において、競合が存在しない製品・サービスはほぼ無いと言えます。

技術の進歩やグローバル化により高度に成熟した市場では、革新的な新規製品・サービスをリリースしてもすぐに競合他社が後追いで似た機能を持つものを開発します。

さらに、インターネットの普及により消費者の情報リテラシーが向上しており、検索をすればすぐに自社の競合サービスを調査・選択できる状況になっています。

このような状況では、自社のあらゆる競合製品・サービスを調査し、その上でどう差別化し、優位性を確立するかが成功の鍵となります。

競合分析の目的


競合分析の目的は、競合他社と自社を比較することで自社の強み・弱みを把握し、戦略やマーケティングプランを最適化することです。

具体的には、以下の役割や目的が挙げられます。

市場理解・消費者ニーズの理解につながる

競合分析を行うと、市場や業界の動向を理解しやすくなります。

例えば、競合他社の製品やサービス、価格設定、マーケティング戦略を調査することで、市場の需要やトレンドを探ることができます。

また競合他社が新しい機能を追加した商品を発売して売上が伸びている場合、その機能が消費者にとってニーズが高いこともわかります。

このように競合分析を実施することで、自社事業における無駄な投資を避け、消費者のニーズに合った商品やサービスを提供できるのです。

自社の立ち位置を客観的に評価できる

競合分析を行うことで、自社サービスの市場における価値を客観的に評価できます。

競合他社の製品やサービスと比較することで、自社の強みや弱みを発見し、競争力を高めるための戦略を策定しやすくなります。

競合分析をやらないと、自社のポジションを過大評価してしまうリスクがあります。

自社が市場で優位に立っていると誤解したまま、競合の動きや新たな代替サービスの存在に気づかず、自社のシェアを守るための対応が遅れる可能性があります。

また、競合サービスと自社サービスのレビューやクチコミを比較すれば、サービスの改善点を明確にできるでしょう。

このように、競合分析は自社サービスの不足部分を補強し、顧客満足度を向上させるのに重要なアクションになります。

事業・マーケティング戦略の精度を高められる

競合分析によって他社の動きを把握することで、事業戦略の精度を高めることができます。

また競合他社の成功例や失敗例を学ぶことで、自社が取るべき行動や避けるべき行動を具体的に理解できます。

例えば、競合他社が新しいマーケットに進出して成功した場合、その手法や戦略を参考にすることで自社も同様の成果を上げられる可能性があります。一方、失敗した事例を分析すれば、無駄な投資や過度なリスクを回避する戦略を立てることも可能です。

このように競合分析を通じて得られる情報は、具体的なアクションプランを策定するうえで貴重なデータとなります。

競合の種類


自社の競合を考えるときは、いくつかの切り口に分けて競合を洗い出すのがおすすめです。

競合となる製品・サービスの切り口として、以下の4種類があります。

・直接競合:自社と同じ市場・業界における同じ
・間接競合:異なるカテゴリではあるものの、同じ顧客層のニーズを満たす製品
・代替競合:同じ市場ではないが、顧客のニーズを別の形で満たすことができる製品
・検索結果上の競合:同じキーワードでの検索上位表示を狙っている製品

例えば、醤油ラーメンを売りにしているラーメン屋の近くに、同じく醤油ラーメンを主力商品としているラーメン屋が存在する場合、この2つのラーメン屋はお互いに直接競合となります。

また、同じエリアで営業するうどん屋やそば屋は「店舗で食事が提供され、お腹を満たすことができる」というニーズを満たすという意味で間接競合にあたります。

「食事」という観点では、コンビニエンスストアの商品やデリバリーサービス、自宅から持ってくるお弁当なども選択肢として入ってくるでしょう。これらはラーメンとは異なる市場ですが、広く代替競合として捉えることができます。

また、「一人ランチ 〇〇(エリア) おすすめ」というキーワードでSEO対策を行っている場合、同じキーワードで上位表示を目指す他のお店やグルメレビューサイトが検索結果上の競合となります。

競合分析に使えるフレームワーク

ここでは競合分析に使えるフレームワークやツールを解説します。

5force分析


5force分析は「業界内の競合の脅威」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」の5つの要因を評価し、自社の収益性を測るフレームワークです。

例えば新規参入が容易な業界では競争が激化し、収益性が低下しやすくなります。このように5force分析は、業界全体の競争環境を包括的に理解するのに役立ちます。

特に新規事業の立ち上げにおいては、市場に参入する前に新規参入や代替品の脅威を評価することで、潜在的なリスクを事前に把握できます。
  

3C分析


3C分析は「Company(自社)」「Competitor(競合他社)」「Customer(顧客)」の3つの要素に着目し、自社の内外環境を分析するフレームワークです。

自社の強みや競合他社との違い、顧客のニーズを明確にすることで、自社の強み・弱みを包括的に把握できます。

新製品の開発やマーケティング戦略を立てる際に3C分析を行うことで、顧客の期待に応える製品やサービスを提供できます。

4P分析


4P分析は「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通チャネル)」「Promotion(プロモーション)」の4つの要素に着目し、マーケティング戦略を総合的に考えるためのフレームワークです。

競合分析に4P分析のフレームワークを活用することで、他社のマーケティング戦略の全体像を知ることができます。

また、4P分析は自社のマーケティングミックス(マーケティング戦略の中で、理想的な顧客の購買行動を得るために、マーケティングフレームワークやツールを組み合わせること)を詳細に検討する際にも役立ちます。

例えば、新商品の価格設定や販促活動の計画を立てる際に、4P分析のフレームワークを使うことで、効果的なマーケティング戦略を策定できます。

カスタマージャーニーマップ


カスタマージャーニーマップは、ユーザーが自社製品・サービスを知ってから購入に至るまでの意思決定のプロセス(旅)と、そこに伴う感情の変化をまとめて可視化するフレームワークです。

Product(製品)・Price(価格)を含めたマーケティングの全体像を把握する4P分析と比較すると、カスタマージャーニーマップは顧客の目線から製品・サービス・プロモーションのあり方を詳細に理解し、改善するのに役立ちます。

特に、販路やコミュニケーション戦略など、顧客の購買プロセスを最適化し、満足度を向上させる施策を検討する際に有効です。

SWOT分析


SWOT分析は「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」
「Threat(脅威)」の4つの要素に着目し、自社の状況を総合的に評価するフレームワークです。

これらの要素を整理することで、強みと機会を活かし、弱みと脅威に対処する戦略を策定できます。

SWOT分析は自社の内外環境を総合的に評価し、新しい事業計画を策定する際に有効です。

ポジショニングマップ


ポジショニングマップは、自社のポジションを明確にするためのフレームワークです。

消費者が商品・サービスを選ぶ際に着目するセグメントやポジショニング(購買決定要因)をマップの軸に据え、マップ上に自社・競合を含めた製品・サービスをプロットすることで、自社の独自性や強み、狙うべき市場やターゲットを分析できます。

他のフレームワークと比較すると、ポジショニングマップは競合他社との違いを視覚的に把握し、差別化戦略を立てる際に役立ちます。

ビジネスモデルキャンバス


ビジネスモデルキャンバス(BMC)とは、ビジネスの構造を可視化するためのフレームワークです。

ビジネスで押さえるべき要素を網羅しており、競合他社のビジネスモデルキャンバスを作成することでビジネスモデルの全体像や各要素間の関係性を確認できます。

また自社のビジネスモデルキャンバスを作成することで、競合とのビジネスモデルの違いも検討できます。

競合分析の手順


ここでは競合分析のやり方と、各ステップで活用できるフレームワークを紹介します。

競合をリストアップする

まずは自社事業のサービス内容やターゲット層などを元に、自社の競合を可能な限り洗い出しましょう。

Web上で「ビール」「仕事用バッグ」など自社の製品カテゴリ名を検索したり、業界レポートを活用したりしながら、直接競合や間接競合の洗い出しを行います。

直接競合や間接競合が見つからない場合は、代替競合や検索上の競合もリストアップすると良いでしょう。

競合他社の概要を把握し、ベンチマークを見つける

競合のリストアップが終わったらコーポレートサイトの情報を元に各社の売上や会社規模、商品特徴などをリサーチしましょう。

競合他社を業界シェアや企業規模の順に並べ替え、市場におけるプレーヤーとそれらの力関係をおおまかに把握します。

その上で自社の情報と比較し、自社がベンチマークするべき競合企業を数社特定します。

新規事業を立ち上げるスタートアップや小〜中規模のベンチャー企業と、潤沢な経営資源を持つ大企業では狙う市場や戦略が全く異なります。

そのため、より有益な競合分析を行うためにも、より自社に近い規模の会社をベンチマークにするのがおすすめです。

様々なフレームワークを用いて競合を分析する

ベンチマークを設定したら、様々なフレームワークを用いながら競合分析を行います。
分析するデータを集める際には、下記の情報に注目すると良いでしょう。

・製品特性
・製品価格
・販売エリア・販路
・Webサイトやオウンドメディア
・広告やプロモーション活動
・プレスリリース
・メディア露出
・イベント出展・受賞歴
・SNSによる発信
・SNSやレビューサイトの口コミ など

上記で集めた情報を、3C・4P・​​カスタマージャーニーマップなどのフレームワークを用いながら整理することで、競合他社のマーケティング戦略や差別化ポイントを把握できます。

必要に応じて追加の市場調査を実施する

参入障壁が高かったり、サプライチェーンが複雑だったりする製品・サービスについては、業界そのものへの理解を深めるために追加の市場調査を実施しましょう。

その際、5force分析を用いることで、業界特有の構造と各社の交渉力を評価できます。

具体的には、下記のデータを集めるのがおすすめです。

・原材料を仕入れるための資源やコネクション
・原材料の仕入れ価格
・製品を生産するための設備の金額
・製品の売り先
・製品の販売価格
・新たに参入してきた企業の特徴
・製品・サービスの規制に関する法律

競合の状況を踏まえて自社の立ち位置を把握する

競合の情報が集まったら、自社についても3C・4P・カスタマージャーニーマップ・5 forceなどのフレームワークに基づいて分析を行います。

そしてその結果をSWOT分析やポジショニングマップに落とし込み、自社の強みと弱みを客観的に把握しましょう。

このステップを実施することで、市場全体を俯瞰した上で自社の立ち位置を理解できるため、その後の戦略の精度が向上します。

分析結果を元に自社の戦略を検討する

最後に、競合分析の結果をもとにアクションプランを策定します。

自社事業の弱みを改善する製品改善やプロモーション施策、また自社の強みをさらに活かすための差別化戦略を検討しましょう。

その際、ビジネスモデルキャンバスを用いて自社の戦略を整理するのがおすすめです。

各要素における改善点や強化すべきポイントを可視化しながら、ビジネスモデル全体の整合性を取ることができます。

またアクションプランの検討後は、具体的な目標や実行計画を立て、関係者に共有することも重要です。

まとめ

競合分析は「自社よりも優れたプロダクトやサービスが存在するのではないか」「突然市場をひっくり返す競合が現れるのではないか」といった恐怖や焦りの感情を伴う取り組みで、しばしば「見て見ぬふり」をしたくなる対象でもあります。

しかし、他者の動向を把握しないままでいると、市場のニーズから乖離したり、競合に対して知らず知らずのうちに大きな差をつけられたりするリスクがあります。

そのため、競合分析を行う際には強靭な精神力を持って取り組むことが不可欠です

本記事で紹介した手順とフレームワークを活用することで、競合他社の動向を把握し、自社の強みを最大限に活かした戦略を策定しましょう。